離婚に関する規定(民法第四編第二章第四節)

第四節 離婚
第一款 協議上の離婚

(協議上の離婚)
第七百六十三条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

(婚姻の規定の準用)
第七百六十四条 第七百三十八条、第七百三十九条及び第七百四十七条の規定は、協議上の離婚について準用する。

(離婚の届出の受理)
第七百六十五条 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定及び第八百十九条第一項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。

(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第七百六十六条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。

(離婚による復氏等)
第七百六十七条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

(財産分与)
第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

(離婚による復氏の際の権利の承継)
第七百六十九条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第八百九十七条第一項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。

第二款 裁判上の離婚

(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

(協議上の離婚の規定の準用)
第七百七十一条 第七百六十六条から第七百六十九条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089_20180401_429AC0000000044&openerCode=1

親権に関する規定(民法第四編第四章)

第四章 親権
第一節 総則

(親権者)
第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

(離婚又は認知の場合の親権者)
第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

第二節 親権の効力

(監護及び教育の権利義務)
第八百二十条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

(居所の指定)
第八百二十一条 子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。

(懲戒)
第八百二十二条 親権を行う者は、第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

(職業の許可)
第八百二十三条 子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
2 親権を行う者は、第六条第二項の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

(財産の管理及び代表)
第八百二十四条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。

(父母の一方が共同の名義でした行為の効力)
第八百二十五条 父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

利益相反行為
第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

(財産の管理における注意義務)
第八百二十七条 親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。

(財産の管理の計算)
第八百二十八条 子が成年に達したときは、親権を行った者は、遅滞なくその管理の計算をしなければならない。ただし、その子の養育及び財産の管理の費用は、その子の財産の収益と相殺したものとみなす。

第八百二十九条 前条ただし書の規定は、無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときは、その財産については、これを適用しない。

(第三者が無償で子に与えた財産の管理)
第八百三十条 無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。
2 前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任する。
3 第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様とする。
4 第二十七条から第二十九条までの規定は、前二項の場合について準用する。

(委任の規定の準用)
第八百三十一条 第六百五十四条及び第六百五十五条の規定は、親権を行う者が子の財産を管理する場合及び前条の場合について準用する。

(財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効
第八百三十二条 親権を行った者とその子との間に財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から五年間これを行使しないときは、時効によって消滅する。
2 子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは、前項の期間は、その子が成年に達し、又は後任の法定代理人が就職した時から起算する。

(子に代わる親権の行使)
第八百三十三条 親権を行う者は、その親権に服する子に代わって親権を行う。

第三節 親権の喪失

(親権喪失の審判)
第八百三十四条 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

(親権停止の審判)
第八百三十四条の二 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
2 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

(管理権喪失の審判)
第八百三十五条 父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。

(親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判の取消し)
第八百三十六条 第八百三十四条本文、第八百三十四条の二第一項又は前条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人又はその親族の請求によって、それぞれ親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判を取り消すことができる。

(親権又は管理権の辞任及び回復)
第八百三十七条 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
2 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089_20180401_429AC0000000044&openerCode=1

米・英・仏・独・韓各国のDV事案における親権及び面会交流の態様

離婚後面会交流及び養育費に係る法制度 ―米・英・仏・独・韓― 調査と情報―ISSUE BRIEF― NUMBER 882(2015.11.17.)

国立国会図書館 調査及び立法考査局行政法務課 (前澤貴子)

Ⅵ DV 事案における親権及び面会交流の態様

 離婚をしようとする夫婦間又は子に対するドメスティック・バイオレンス(DV)については、各国とも裁判所の積極的な関与(DV の有無の確認、子の処遇に関する裁判所命令等)が見られ、共同親権の制限、停止等の措置が採られている(表1)。例えば、アメリカ(カリフォルニア州)では、DV 事案を専門に扱うDV 裁判所による審理の中で離婚や子の処遇に関する決定もなされる。
 夫婦間DV の事案においては、いずれの国でも共同親権の停止がなされ得る。これは、そもそも共同親権は離婚後も父母双方が子の養育に関わることが子の福祉に資するとの趣旨に基づくところ、DV 事案においては父母の有効な合意形成が期待できず(共同親権停止の許容性)、また、共同親権が維持されている限りDV 被害者である一方の親が子を連れて別居することが子の連去りに該当し得るためである(共同親権停止の必要性)。
 一方、面会交流については、共同親権が制限又は停止される事案にあっても、第三者による子の引渡し、監督付面会交流等の形で維持されることが多い。
 子に対するDV(虐待)については、いずれの国も共同親権の停止事由としている。また、いわゆる虐待には当たらない場合であっても、フランスにおける訪問権等の2 年間の不行使、ドイツにおける養育費不払といった親権や扶養義務の不履行が親権停止事由となる場合もある。一方、面会交流は共同親権の停止とは必ずしも連動せず、監督付面会交流等の維持を目指す国が多い。これは、子との交流の継続がDV 加害者の矯正・治療に有効であると考えられるケースが指摘されているためである。

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表1

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9532035_po_0882.pdf

日本の離婚時子の連れ去り文化が海外からどう見られているか

木村正人が米国での対日批判を紹介し、日本も共同親権を採用すべきと主張している。
また、連れ去りをDV対策だと正当化しハーグ条約を批判する言説に対して「DVが明らかであれば裁判所は子供を元の居住国に戻す必要はありません」と反論している。

「子供400人が94年以降、米国から日本に拉致された」共同親権ハーグ条約違反常習国の汚名返上を

木村正人 | 在英国際ジャーナリスト
8/29(水) 20:05

国務省が日本を名指しで非難

[ロンドン発]日経新聞が「ハーグ条約『日本は不履行』子供連れ去り対応迫る」と報じました。 背景にはドナルド・トランプ米政権からの強烈なプレッシャーがあります。ハーグ条約とは国境を越えて不法に連れ去られた子供の返還や面会交流を確保するための条約です。
今春、米共和党クリス・スミス連邦下院議員は議会の証言で「1994年以降、国際結婚で生まれた300~400人の子供が米国から日本に連れ去られた。今なお日本にいる35人以上の子供が米国の親たちと再会できる日を今か今かと待っている」と訴えました。
5月には米国務省が「国際的な子供の拉致」年次報告書で、日本、中国、インド、ブラジル、アルゼンチン、バハマ、ドミニカ、エクアドル、ペルー、ヨルダン、モロッコアラブ首長国連邦UAE)の12カ国を「ハーグ条約違反の常習国」と認定しました。先進7カ国(G7)の中では日本だけという不名誉です。
年次報告書によると、日本でハーグ条約が発効した2014年以降、連れ去り報告件数は年平均で44%ずつ減っていますが、それでも16年時点で「連れ去られた」と訴えのあった子供は計23人(うち14人が解決)にのぼり、17年では計14人(同4人)となっています。
日本でハーグ条約が発効する前の連れ去り21件について米国務省は日本政府に対し、解決するよう求めています。しかし、ハーグ条約に基づき返還命令が確定しても子供を連れ去った親が拒んだ場合、日本では有効な執行手段がないため、ハーグ条約違反が繰り返されていると報告書は指摘しています。

「連れ去り」は「拉致」と同じ

わが国では国際結婚が破綻したため母親が子供を嫁ぎ先の国から日本に連れ帰ることはそれほど珍しいことではありませんでした。しかし米国では「連れ去り」には、北朝鮮の日本人拉致と同じ「拉致(abduction)」という言葉が使われています。それだけ重大事案だということです。
ハーグ条約についてはご存知の方も多いと思いますが、簡単におさらいしておきましょう。「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」は1980年にオランダ・ハーグで採択されたことから「ハーグ条約」と呼ばれています。加盟国は現在98カ国です。
片方の親が16歳未満の子供を無断で国外に連れ去った場合、子供をいったん元の居住国に戻して、その国の裁判で養育者(監護者)を決めるという国際的な取り決めです。
国際結婚の破綻に限らず、同じ国籍同士の結婚にも適用されます。ロシアを含めたG8では日本だけが未加盟だったため、欧米から強く加盟を迫られ、日本でも14年に発効しました。
外務省によると、条約発効後、180件の返還援助申請があり、うち158件の援助を決定。面会交流援助申請は127件で、うち援助が決定されたのは109件です。
日本から外国への返還援助申請は99件、援助が決定したのは85件。このうち解決したのは60件、子供の返還が確定したり実現したりしたのは32件でした。子供の返還がいかに困難を伴うかがうかがえます。
今年3月には、米国在住の夫が13歳の息子の返還命令を拒む妻に子供の引き渡しを求めていた裁判で、最高裁ハーグ条約に基づき確定した子供の返還命令に従わない場合、「違法な拘束にあたる」との初判断を示しました。
子供の引き渡しの強制執行については子供と債務者(多くの場合は母親)が一緒にいる場合でなければすることができないとされていますが、両親の板挟みになった子供に葛藤が生じる恐れがあることから、一定の要件下で子供と債務者が一緒でなくても強制執行を可能とする方向で議論が進められています。

「日本の家族法は『人さらい憲章だ』」

子供の連れ去りについて、日本に厳しいのは米国だけではありません。
英国の市民団体「チルドレン・アンド・ファミリーズ・アクロス・ボーダーズ(CFAB)」は、英国人男性と離婚した日本人女性が無断で子供を日本に連れ去った事案を取り扱ってきました。
責任者のアンディ・エルビン氏は10年、日本の政府と政治家にハーグ条約への加盟を説得するため日本を訪れたことがあります。日本でのハーグ条約発効時にエルビン氏にお話をうかがうと、厳しい言葉が返ってきました。
「以前は連れ去られた子供を英国に連れ戻す手段がなかった。英国人の親は日本の裁判所に提訴することもできなかった」「英国人の多くは日本の家族法を、夫婦間に葛藤が生じたとき連れ去りや面会拒否を促す悪名高き『人さらい憲章』とみなしてきた」
エルビン氏は日本でのハーグ条約発効について「とてもうれしい。両親が離婚したとしても、子供には両方の親と建設的な関係を保ちながら育つ権利がある。連れ去りや面会拒否は子供を含めた当事者全員を苦しめる」と語りました。
14年7月には、ハーグ条約は英国で母親と暮らす日本人の子供に初めて適用されました。日本人夫婦間の争いで、母親が子供を連れて渡英。日本で暮らす父親の申請に対して、英国の裁判所が子供を日本に戻すよう命じました。

米国では7億円の支払い命令、テロリスト扱いも

日本人と外国人の国際結婚は1970年には年間5000件程度でしたが、80年代後半から急増し、2005年には年間4万件を超えました。一方、日本国内での日本人と外国人夫婦の離婚は1992年に7716件(離婚全体の4.3%)でしたが、2010年には1万8968件(同7.5%)に膨らんでいます。
増加する国際結婚の破綻に伴って、日本人が外国から無断で子供を日本に連れ帰ったり、逆に外国人の親が日本から子供を国外に連れ去ったりする事例が増えました。
11年、米国のテネシー州では、離婚後に子供を無断で日本に連れ帰った日本人の元妻を相手に米国人男性が損害賠償を求めた裁判で、元妻は610万ドル(6億7800万円)という巨額の支払いを命じられました。
連邦捜査局(FBI)の最重要指名手配犯リストでは、米国人の元夫に無断で子供を連れて日本に帰国した日本人女性の名前がテロリストと同様に扱われていました。海外で離婚した母親が子供と一緒に帰国しようとしても、連れ去り防止のため出国を許可されない事態も発生していました。

連れ去りはDV対策になり得るか

日本では「外国でのDV(家庭内暴力)被害や生活苦から避難するため、日本への連れ去りは最後の手段として必要」という反対論があります。しかしハーグ条約でも、DVが明らかであれば裁判所は子供を元の居住国に戻す必要はありません。
ハーグ条約で返還が拒否できる事例を見ておきましょう。
(1)連れ去りから1年以上経過した後に裁判所に申し立てられ、子供が新しい環境に適応している場合
(2)申請者が連れ去り時に現実に監護の権利を行使していない場合
(3)申請者が事前の同意または事後の黙認をしていた場合
(4)返還により子供が心身に害悪を受け、または他の耐え難い状態に置かれることとなる重大な危険がある場合
(5)子供が返還を拒み、かつ該当する子供が、その意見を考慮するに足る十分な年齢・成熟度に達している場合
(6)返還の要請を受けた国における人権および基本的自由の保護に関する基本原則により返還が認められない場合

日本にも共同親権

子供には母親だけではなく父親の愛情も欠かせません。母親にとっても父親にとっても子供はかけがえのない存在です。国際結婚が破綻する理由は、性格の不一致、言葉や生活、文化、習慣の違い、家庭内暴力(DV)などさまざまです。
単独親権制度を採用している日本では、犯罪や禁治産宣告などの問題でもない限り、親権は母親に認められています。英国では離婚後も親権は両方の親にある共同親権を認めており、裁判で監護者や面会の条件などを決める仕組みになっています。
男女平等が徹底しているように見える英国でも、家庭裁判所の判断で父親の面会が制限されたり、母親が無断で子供を連れ去ったりする事例が少なくありません。
英市民団体「ファーザーズ・フォー・ジャスティス」はバットマンに扮装してバッキンガム宮殿に 登ったり、下院で首相に小麦粉を投げつけたりする過激パフォーマンスで離婚した父親の親権強化を訴えています。
日本でも上川陽子法相が単独親権制度の見直しを検討する考えを表明しました。何かの事情で離婚に至っても、子供を父親から取り上げるのは「拉致」と同じです。父親と母親の2人で子供を育てていく姿勢を示すことが大切だと思います。
(おわり)

https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20180829-00094946/

日本国憲法第三章の自由権的基本権の保障規定に関する最高裁判所の考え方

最高裁昭和四三年(オ)第九三二号同四八年一二月一二日大法廷判決

 主文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。

(抜粋)
第二、当裁判所の見解
(一を省略)
二、原判決は、前記のように、上告人が、その社員採用試験にあたり、入社希望者からその政治的思想、信条に関係のある事項について申告を求めるのは、憲法一九条の保障する思想、信条の自由を侵し、また、信条による差別待遇を禁止する憲法一四条、労働基準法三条の規定にも違反し、公序良俗に反するものとして許されないとしている。
 (一) しかしながら、憲法の右各規定は、同法第三章のその他の自由権的基本権の保障規定と同じく、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もつぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。このことは、基本的人権なる観念の成立および発展の歴史的沿革に徴し、かつ、憲法における基本権規定の形式、内容にかんがみても明らかである。のみならず、これらの規定の定める個人の自由や平等は、国や公共団体の統治行動に対する関係においてこそ、侵されることのない権利として保障されるべき性質のものであるけれども、私人間の関係においては、各人の有する自由と平等の権利自体が具体的場合に相互に矛盾、対立する可能性があり、このような場合におけるその対立の調整は、近代自由社会においては、原則として私的自治に委ねられ、ただ、一方の他方に対する侵害の態様、程度が社会的に許容しうる一定の限界を超える場合にのみ、法がこれに介入しその間の調整をはかるという建前がとられているのであつて、この点において国または公共団体と個人との関係の場合とはおのずから別個の観点からの考慮を必要とし、後者についての憲法上の基本権保障規定をそのまま私人相互間の関係についても適用ないしは類推適用すべきものとすることは、決して当をえた解釈ということはできないのである。

(二) もつとも、私人間の関係においても、相互の社会的力関係の相違から、一方が他方に優越し、事実上後者が前者の意思に服従せざるをえない場合があり、このような場合に私的自治の名の下に優位者の支配力を無制限に認めるときは、劣位者の自由や平等を著しく侵害または制限することとなるおそれがあることは否み難いが、そのためにこのような場合に限り憲法の基本権保障規定の適用ないしは類推適用を認めるべきであるとする見解もまた、採用することはできない。何となれば、右のような事実上の支配関係なるものは、その支配力の態様、程度、規模等においてさまざまであり、どのような場合にこれを国または公共団体の支配と同視すべきかの判定が困難であるばかりでなく、一方が権力の法的独占の上に立つて行なわれるものであるのに対し、他方はこのような裏付けないしは基礎を欠く単なる社会的事実としての力の優劣の関係にすぎず、その間に画然たる性質上の区別が存するからである。すなわち、私的支配関係においては、個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは、これに対する立法措置によつてその是正を図ることが可能であるし、また、場合によつては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存するのである。そしてこの場合、個人の基本的な自由や平等を極めて重要な法益として尊重すべきことは当然であるが、これを絶対視することも許されず、統治行動の場合と同一の基準や観念によつてこれを律することができないことは、論をまたないところである。
(以下略)

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/931/051931_hanrei.pdf

この最高裁判決が、憲法13条違反や14条違反を問う最高裁判決で頻繁に引用されている。

第13条

 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第14条

 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

第19条

 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

憲法第3章で規定されている自由権的基本権の保障は、「国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もつぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない」というのが、最高裁の見解である。
「私人間の関係」については、「原則として私的自治に委ねられ」ていて、「憲法上の基本権保障規定をそのまま私人相互間の関係についても適用ないしは類推適用すべきものとすることは、決して当をえた解釈ということはできない」とのこと。

(二)で「私人間の関係においても、相互の社会的力関係の相違から、一方が他方に優越し、事実上後者が前者の意思に服従せざるをえない場合があり、このような場合に私的自治の名の下に優位者の支配力を無制限に認めるときは、劣位者の自由や平等を著しく侵害または制限することとなるおそれがあることは否み難い」と認めているものの、それでもなお「憲法の基本権保障規定の適用ないしは類推適用を認めるべきであるとする見解もまた、採用することはできない」と、私人間の関係に憲法上の基本権保障規定を適用することを認めていない。
その理由として、「国または公共団体の統治行動」は「権力の法的独占の上に立つて行なわれるものであるのに対し」、「私人間の関係」では「このような裏付けないしは基礎を欠く単なる社会的事実としての力の優劣の関係にすぎ」ないことを挙げている。

では、「私人間の関係において」「劣位者の自由や平等を著しく侵害または制限する」事態が生じた場合はどうするのかというと、「これに対する立法措置によつてその是正を図ることが可能であるし、また、場合によつては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて」「基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途」があるから問題ないというのが最高裁の考え方。

ここでいう民法1条とは信義誠実の原則を指し、民法90条とは公序良俗違反を指している。

第一条

 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。

第九十条

 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

最高裁昭和四三年(オ)第九三二号は、企業が雇用に際して思想・信条の申告を求めることの違法性を否定しているが、その理屈が(1)企業対個人であっても私人間の関係であって、憲法14条は適用されない、(2)一方の私人たる企業にも雇入れそのものには広い範囲の自由を有しており労働基準法3条に制限されていない、(3)その上で企業側が思想・信条を理由に雇入れを拒否したとしても違憲でも違法でもなく、そのような行為が公序良俗に反するとも解釈されない、というもの。

当事者にとっては心情的に納得しがたいだろうが、理屈としては上手く出来ていると言わざるを得ない。

日本の民法は離婚後共同親権を認めていないが、その違憲性を裁判所に問うたとしても憲法13条・14条違反という主張であれば、最高裁判所がその主張を認め違憲と判断する可能性は極めて少なかろう。

虚偽DVを指摘した名古屋地裁判決

名古屋地方裁判所2018年4月25日判決(福田千恵子裁判長)はDV被害の訴えを虚偽・誇張と指摘し「いったんDV加害者と認定されれば容易に覆らない現行制度は見直すべきだ。まず被害者を迅速に保護して支援を開始した上で、加害者とされた側の意見もよく聞き、その結果に応じて支援の在り方を見直していく制度にすれば、社会問題化している制度悪用の弊害を防げる」と言及した。
なお、本事件は名古屋高裁で逆転判決が出ている。

虚偽DV 親権のための法的テクニック 社会問題化「制度見直すべきだ」

5/8(火) 7:55配信 産経新聞
 「より良い制度に向けた検討が期待される」。今回の判決で、福田千恵子裁判長はそう踏み込んだ。この提言は(1)DV被害者の支援制度が、子供と相手親を引き離す手段として悪用されている(2)加害者とされる側の権利を守る手続きがなく、虚偽DVの温床となっている-などの問題意識を反映したものだ。この判決は今後、制度の在り方をめぐる議論につながる可能性もある。
 子供をめぐる夫婦間トラブルで多い類型は、一方の親が相手親に無断で子供を連れ去り、その理由として「DVを受けていた」と主張する-というものだ。
 従来は、たとえ連れ去りの結果であっても、現在の子供の成育環境の維持を考慮する考え方(継続性の原則)などが重視され、連れ去られた側が不利となる事例が多かった。さらに相手からDVを主張された場合、子供との交流の頻度や方法を決める際にも不利に扱われやすいとされる。
 DV主張は覆すのが困難で、実務上、証拠が乏しくてもDVが認定されることが多い。実際、裁判記録などによると、DV認定を抗議した夫に警察官は「女性がDVを訴えたら認定する」と発言。法廷でも「支援申請を却下したことは一度もない」と証言した。
 この問題に詳しい上野晃弁護士は「こうした運用は愛知県警だけでなく、全国的に同様だ。警察は申請を却下した後に事件などが起き、責任追及されるのを恐れるためだ」と分析する。
 一方で近年では、「親権や慰謝料を勝ち取る法的テクニックとして、DVの捏造が横行している」「連れ去りをした側が有利な現状はおかしい」との指摘も出ていた。
 国会でも平成27年4月、ニュースキャスター出身の真山勇一参院議員が、現行制度下で子供の連れ去りや虚偽DVが横行している問題を指摘した。
 福田裁判長は「いったんDV加害者と認定されれば容易に覆らない現行制度は見直すべきだ。まず被害者を迅速に保護して支援を開始した上で、加害者とされた側の意見もよく聞き、その結果に応じて支援の在り方を見直していく制度にすれば、社会問題化している制度悪用の弊害を防げる」と指摘。司法府が立法府に注文をつけるのは異例だ。
 原告側代理人の梅村真紀弁護士は「(判決が)子供第一の協議が行われるきっかけになってほしい」と話す。
 妻側は既に控訴しており、上級審の判断が注目される。(小野田雄一)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180508-00000068-san-soci

名古屋地裁>「誇張のDV被害、妻が面会阻止目的で申告」

5/8(火) 22:06配信 毎日新聞
 ◇妻と愛知県に55万円の支払い命令
 別居中の妻が虚偽のドメスティックバイオレンス(DV)被害を申告し、愛知県警の不十分な調査で加害者と認定され娘に会えなくなったとして、愛知県の40代の夫が妻と県に慰謝料など計330万円を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁(福田千恵子裁判長)は計55万円の支払いを命じた。夫側弁護士が8日、明らかにした。妻は控訴している。
 4月25日付の判決によると、妻が長女を連れて別居後、夫の申し立てで名古屋家裁半田支部が2014年、長女と夫の面会などをさせるよう妻に命じた。妻は16年、夫に住所などを知られないようにする支援を申請し、県警の意見を基に自治体が住民基本台帳の閲覧を制限した。
 判決は「DV被害は事実無根と言えないが誇張された可能性はあり、妻が面会阻止目的で申告した」と認定した。県警については、被害者の安全確保が最優先で多角的な調査を常に行う義務はないとしつつ「支援制度の目的外利用も念頭に置くべきなのに、事実確認を全くしなかった」と賠償責任を認めた。
 さらに「支援制度悪用が社会問題化している。加害者とされる者にも配慮する制度設計があるはずで、検討が期待される」とした。夫側弁護士は「支援制度の不備に踏み込んだ画期的な判決」と話した。【野村阿悠子】

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180508-00000102-mai-soci