米・英・仏・独・韓各国のDV事案における親権及び面会交流の態様

離婚後面会交流及び養育費に係る法制度 ―米・英・仏・独・韓― 調査と情報―ISSUE BRIEF― NUMBER 882(2015.11.17.)

国立国会図書館 調査及び立法考査局行政法務課 (前澤貴子)

Ⅵ DV 事案における親権及び面会交流の態様

 離婚をしようとする夫婦間又は子に対するドメスティック・バイオレンス(DV)については、各国とも裁判所の積極的な関与(DV の有無の確認、子の処遇に関する裁判所命令等)が見られ、共同親権の制限、停止等の措置が採られている(表1)。例えば、アメリカ(カリフォルニア州)では、DV 事案を専門に扱うDV 裁判所による審理の中で離婚や子の処遇に関する決定もなされる。
 夫婦間DV の事案においては、いずれの国でも共同親権の停止がなされ得る。これは、そもそも共同親権は離婚後も父母双方が子の養育に関わることが子の福祉に資するとの趣旨に基づくところ、DV 事案においては父母の有効な合意形成が期待できず(共同親権停止の許容性)、また、共同親権が維持されている限りDV 被害者である一方の親が子を連れて別居することが子の連去りに該当し得るためである(共同親権停止の必要性)。
 一方、面会交流については、共同親権が制限又は停止される事案にあっても、第三者による子の引渡し、監督付面会交流等の形で維持されることが多い。
 子に対するDV(虐待)については、いずれの国も共同親権の停止事由としている。また、いわゆる虐待には当たらない場合であっても、フランスにおける訪問権等の2 年間の不行使、ドイツにおける養育費不払といった親権や扶養義務の不履行が親権停止事由となる場合もある。一方、面会交流は共同親権の停止とは必ずしも連動せず、監督付面会交流等の維持を目指す国が多い。これは、子との交流の継続がDV 加害者の矯正・治療に有効であると考えられるケースが指摘されているためである。

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表1

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9532035_po_0882.pdf